不倫の慰謝料請求はいつまでできるのか

文責:所長 弁護士 横江利保

最終更新日:2025年01月07日

1 不倫慰謝料の請求権には時効があります

 不倫慰謝料を請求することができる権利は、法律(民法第724条)により、次のいずれか早い方が訪れると時効によって消滅します(消滅時効といいます)。

 ①損害及び加害者を知った時から3年間

 ②不法行為の時から20年間

 ①は、不倫の加害者によって異なることがあります。

 不倫慰謝料の支払い義務を負うのは、通常、不倫(不貞行為)をした配偶者と、その不倫相手です(この両名が加害者ということになります)。

 そして、それぞれ消滅時効のカウントが開始される時期が異なることがあります。

 まず、配偶者に対する慰謝料請求権は、通常であれば不倫の事実を知った時と加害者を知った時が一致しますので、不倫の事実を知った時から3年間で消滅します。

 次に、不倫相手の場合、不倫の事実を知った時よりも、加害者を知った時が遅くなることがあります。

 不倫相手の身元が判明するまでに時間を要することがあるためです。

 この場合、不倫慰謝料請求権は、不倫相手の身元が判明した時から3年間で消滅することになります。

 また、②によって、不貞行為があった時から20年が経過してしまうと、その後不倫の事実やその相手を知ったとしても、不倫慰謝料の請求はできなくなります。

2 慰謝料請求権の消滅時効完成猶予と更新

 不倫慰謝料を請求する権利の消滅時効が近い場合、時効の完成の猶予または更新(2020年4月の民法改正の前は、完成の猶予は「停止」、更新は「中断」という用語が用いられていました)により、消滅時効の完成までの期間が延長されます。

 時効の完成猶予の方法としては、催告、裁判上の請求、民事調停、家事調停が挙げられます。

 催告は、裁判外で内容証明郵便などを用いて慰謝料を請求することであり、催告の時から6か月が経過するまでは時効が完成しません。

 その間に、訴訟や調停を提起して時効の更新をするということがあります。

 裁判上の請求(訴訟など)や民事調停、家事調停が提起された場合、手続きが終了するまでの間、時効の完成が猶予されます。

 これらの手続きによって不倫慰謝料請求権が確定すると、時効は10年に更新されます。

 裁判上の請求や民事調停、家事調停のほか、消滅時効を更新する方法として、加害者が不倫慰謝料の支払義務を認めること(承認)があります。

 実務においては、承認の際には債務承認書などを作成します。

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